技術レベル向上!達成して欲しいチーム目標数値 ① ~1イニングでも多く進もう~

 

近年、少子化や他競技の人気により、1学年で9人集める事が難しくなり、さらに2020年からの新型コロナウイルス感染拡大の影響により、練習・試合が激減し、小学生男子ソフトボールは、10年前と比べると技術レベルがかなり劣ってきたように感じています。

 そこで、レベルの高い上部大会(全国、東・中・西日本、東北~九州大会等)や福岡、神奈川、広島、鹿児島、大阪等の試合を実際に拝見したり、動画で視聴したりして、レベルの違いを数値で比較したり、目標基準値を出して、各地区のレベルアップに繋げる事が出来ないか試行錯誤してきました。

 

各地区の大会で優勝したり、上部大会に出場する、あるいは上部大会で入賞する事も1つのステータスとしてあってもよいと思うのですが、優勝出来なくても、全国大会に行けなくても、

 

・この数値をクリアしたら、選手には「よく頑張った!」と褒めてあげられる

・「この数値に届くように頑張ろう!」という目標に

・この数値を境として、強いチームと弱いチームの比較対象が出来て、自チームを可視化する境界線

 

という数値になればと思います。

なお、先に申しますと、下記の4つが目標数値になります。

 

 

 

目標数値①:1回でも多く進めよう。

      50分試合は、試合時間50分台で5回まで進めよう。

      60分試合は、試合時間60分台で6回まで進めよう。

      70分試合は、試合時間70分以内で7回を終えよう。

      80分試合は、試合時間80分以内で7回を終えよう。

      90分試合は、試合時間90分以内で7回を終えよう。

 

目標数値②:毎試合のストライク率が65.0%~69.9%以内に収められる事。

 

目標数値③:チームのスイング率を毎試合70%を超える事。

      チームのコンタクト率を毎試合57.1%を超える事。

 

目標数値④:毎試合、進塁阻止数を「+1」以上にする事。

 

 

詳細は、添付をご確認下さい。

 

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小学生男子ソフトボール 技術レベル向上のための達成目標数値 提案.pdf
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どれも頑張らないと達成出来ない数値にしていますが、対戦相手によって、クリア出来る数値もあると思います。

 

チームの減少により、都道府県予選を1勝しただけで上部大会に出場出来たり、1勝もせずに3位入賞した大会。レベルの低い地区で無双して誇っているチームを見ると、凄く寂しく思います。

勝敗だけでなく、技術レベルを上げるための参考数値として皆様のお力になればと思います。

 

 

 

 

 

1、強いチームと弱いチームの違いは、「1試合でイニング数をどれだけ多く進めたかどうか」である。

 

小学生男子ソフトボールチームの強いチームと弱いチームの境界線は、「1試合でイニング数をどれだけ多く進めたかどうか」で、判断出来ます。

 

いきなりですが、これを読んだ方も考えて欲しい質問をさせて頂きます。

 

「レベルの高い・低い投手とはどういう投手ですか?」

「レベルの高い・低い打者はどういう打者ですか?」

「レベルの高い・低い守備とは?」

「レベルの高い・低い走塁とは?」

 

 下記の表は私が思った点です。

 

 

 

 

レベルが高いチームの技術力を想像して頂ければと思います。

相手打者レベルを考えずに、投手だけ考えれば、球速が速くて、コントロールが良く、全部三振を取れれば、早くて9球で1イニングは終わります。

相手投手レベルを考えずに、打者だけ考えれば、9人全員ヒットは最短で9球必要です。

相手投手・打者レベルを考えずに守備だけで考えれば、早くて3球でチェンジになります。

 

打者の打率は、3割打てれば御の字と言えるスポーツですから、レベルの高い試合は守備を中心に進んでいくので、必然と試合が進むのは早くなります。

 

では、それが本当なのか、全国大会の試合時間と進んだイニングを見てみましょう。

 

 

 

2、全国大会の試合時間比較

 

下記画像は、2015年~2023年までの春夏全国大会の平均試合時間をまとめた表になります。

 

 

 

 

結果を見ると、青色の1回戦の試合は基本的に90分を超える試合が多く、黄色のベスト8以降の半分が90分以下で試合を終えています。(試合時間は延長戦も含めています)

つまり、レベルの高い試合は試合時間が短いという事が、これで分かると思います。

 

また、下記画像は、2015年~2023年の大会で、7回まで進んだ試合が何試合あったかを表にしました。7回以上行った試合数は、1回戦、2回戦での試合数よりも、3回戦以降での試合が10大会分多いです。

 

つまり、レベルの高い試合ほど7回まで進むというのが、分かると思います。

 

 

 

 

以上の事から、「技術レベルが高い=試合時間は短く、7回まで行く」という事が立証されると思います。

 

 

 

では、

 

・7回以上進んだ試合って何試合あるのか

・7回(延長含む)以上進んで、90分以内で終えた試合はどれだけあるのか

 

という点も調べました。

 

 

 

 

 全国大会の試合は、1回戦~決勝戦まで全47試合が基本的には行われました。

(2021~2023年は、コロナ禍もあり、試合数が若干増減しています。)

まず、7回まで進んだ試合数を見ると、2015年~2019年まではほとんど30試合を越え、半数を割った事もありませんでした。

しかし、2021年から30試合を割り、2022年、2023年は7回まで進んだ試合数は半分も行かなくなりました。

 7回を90分以内で終えた試合数を見ると、最多は2017年の20試合ですが、2021年、2022年になるにつれて、その試合数はかなり減少しています。

 

私は、これをレベルの低下と考えていますので、ぜひ、提言させて頂きたく、この話を書いた次第です。

 

 

 

3、1試合で進んで欲しいイニング数の目安

 

試合時間90分で、7回まで進まずに終了する試合が増えてきているので、ぜひ、地区の大会から1回でも多く回数をこなす事を目標として欲しいです。

 実際、私も鹿児島で指導していた時、様々な指導者からも「1試合で1回でも多く進む事が強いチームに近づける」と言われてきました。

1回でも回数をこなせば、1球でも多く経験が出来ます。1球でも多く経験出来るということは、1球技術レベルが上がるという事です。だから、強いチームに自然となっていく。

 

 

よって、下記のような表が出来るので、ぜひ、この目標で試合をして欲しいと思います。

 

 

 

 

50分試合なら5回までは進めよう。60分試合なら6回まで進めよう。70~90分試合なら7回まで進めよう。

もし、そんな試合が出来た時は、例え負けたとしてもぜひ、選手達に「良い試合だったよ」と褒めて欲しいです。

例え点数差があったとしても、選手達がキビキビ動けば達成出来ます。

また、振り返ってみて、良い試合だったと思う試合は、回数をこなしている事が多いのではないでしょうか。

 

50分試合で2回終了。60分試合で3回終了。70~90分試合で4回終了。

こういう試合は、

 

・投手のコントロールが悪い(バッテリーエラーが多い)

・守備が乱れる

・打撃は良く打つ(コールドゲーム)

・タイムアウトの取り過ぎ

 

がほとんどです。

もし、同点~3点差以内の試合であれば、ストライクが入らないのか、守備が悪いかのどちらかだと思います。厳しい言い方ですが、打たれたのではなく、「アウトにする力が無い」が正解だと思います。

 

また、時間が長くなる要因として、キャッチャーが捕れないボールを投げる投手が多いのも特徴です。つまり、ワイルドピッチ、パスボールが多いと、次のボールを投げるまでに20秒程費やしてしまいます。ランナーがいなくてもそのようなボールがあるとバックネットの長さにもよりますが、捕手が急がない限り、プラス20秒長くなると思った方が良いです。投手のコントロールの精度を高める事、捕手のキャッチングレベルの向上をぜひ、練習して欲しいです。

 

 

実際、2022年に観に行った、広島の強豪同士の試合は、ほとんどが50分5回、80分7回まで進んだ試合でしたし、大阪の蓮池さよなら大会も見たほとんどが50分試合で5回まで進みました。

福岡で開催されている毎年年末の試合では、ほとんどが6、7回まで進んでいます。鹿児島の3月に開催される県大会も70分で6、7回まで進む試合がほとんどです。長崎なんかも全国大会の県予選から7回行きます。

全国大会の最短試合の記録は55分です。1時間以内に7回まで進む事は可能だと思います。

 

 

逆に、東京・千葉・埼玉・神奈川でもレベルの低い試合は、圧倒的に回数が進まないです。

横浜市の金沢区のチームはレベルが高かったのですが、2022年末に拝見した横浜選手権のベスト8以上の試合は、70分試合ながら、やっと5回まで進んだというレベルでしたし、2023年1月末に観た、千葉県・松戸市のMC杯決勝は、7回まで進みましたが、2時間もかかり、見ていてしんどかったです。

 

2015年頃、千葉で2チーム程、レベルの高い良いチームでしたが、わざと時間をかけて進めているチームも見かけました。

初回に1点が取れたので、監督さんがやたらとタイムをかけて時間を稼ぎ、2回で終了して勝ちを得た試合を見ました。

あるチームは、投手がボールを持ってから、1球投げるまでに30秒程時間をかけて投げていました。

勝ちたいがために時間をかけるのは、その試合だけしか良い事ないです。そういう試合は、両チーム共にレベルが上がらないです。地区大会レベルでそういう事をやっているのを見ると、残念でなりません。

 

三振やアウトを取った後、内野でボール回しをしているチームもあります。都道府県によっては、そのボール回しを禁止にしている所もあります。ボール回しをするなとは思いませんが、出来れば10秒以内で回し終えて欲しいです。時間のかかるボール回しは見てられないので、もっと練習してきて欲しいです。

 

これを読んでいる皆様の地区はどうですか?

 

ぜひ、地区の試合から短時間でイニングが多く進む試合を心掛けて欲しいと思います。

 

 

 

4、強いチーム程、チェンジが早く、荷物が整理整頓されている。

弱いチーム程、チェンジが長く、ベンチが汚い。

 

 技術レベルが無いとしても、どんなチームでも絶対に出来るのは攻守交代の時間を素早く行う事です。弱いチームにありがちですが、攻守交代の時間が明らかに長いです。東京・千葉・埼玉・神奈川でも横浜市に特に多いです。勿論、他府県でも同じで、攻守交代の時間が2分程度だったら、レベルが低い試合と判断しています。

2022年、松戸で秋のジュニアリーグ、ベスト8の試合を拝見しましたが、松戸のチームの技術レベルはそこまで悪くはなかったですが、チェンジに2分程かかっていました。

 勿論、規定の時間内で悪くはないですが、横須賀を筆頭に、福岡、広島、鹿児島などは、チェンジの攻守交代時間がとても早いです。1分かかるかかからないかです。早いチームだと3アウトから30秒で次の攻撃のプレイが始まります。

 申し訳ないですが、どの地区のチームでもですが、全国レベルと言いたいならば、攻守交代を30秒~1分以内。長くても1分30秒かからないくらいで終わらせて欲しいです。(3アウト後、次の攻撃が始まるまでに)

 

 攻守交代を素早く行いたいならば、3アウトしてから交代の準備をするのではなく、攻撃チームはほとんど、2アウト時に攻守交代の準備をしています。それは、攻撃を諦めた訳ではなく、次の攻撃をもう1度行うために早く守備を終えようとするためです。

 

 「強いチームは、ベンチが綺麗」なんて言葉、よく聞きませんか? これの本当の理由は、チェンジで交代をしやすくするためです。綺麗に整っていれば、どこに何があるか分かるし、どこに何を置けば良いか理解していれば、攻守交代はすぐ出来ます。

 

強いチーム程、イニング数を多く行って、経験を増やしている。

だから、さらに強くなるという訳です。

 

 

では、1回でも多く回数を行うために、他にはどのような数値が必要か。

次は、投手と打者の数値についてお伝えします。

 

 

 

 この数値を目指す事によって、「強制」的な練習から、「共生」的な練習に(全選手がレベルの高い選手になるような練習を)なる事を。

 

「勝ちを目指した競争」から「価値を目指した共創」(ライバル同士切磋琢磨して、ソフトボールの価値を高める)をしていく世界になる事を願っています。