練習時間、試合数、大会数は、やり過ぎてもやらなさ過ぎても問題。ちょうど良い基準を検討してみました。

 

 

昨今、メディアでも少年野球の練習時間・試合数について問われている記事を多く目にするので、小学生男子ソフトボールはどうあるべきかを検証してみました。

 

確かに、短い練習時間内で成果の出る指導をしなくてはいけない時代と思います。ソフトボールしか出来ない子に育てる事への無意味さ、燃え尽き症候群になりがち、指導者・保護者にも負担がかかる点等から、常時長時間練習をしているチームへの入部は、嫌われる傾向にありますし、社会的・健康的にも問題視されているのが現状です。

しかしながら、練習時間の短過ぎも問題が出るという事を明らかにしたく、適正な練習時間・試合数があるはずと思いましたので、検証してみました。

 「小学生の内は楽しくやれれば良いから短時間で良い」と簡単に片づけるつもりは無いですが、「全国制覇・都道府県大会制覇に囚われ過ぎて、過度な練習量・試合数をこなす」という事も違うと思っています。

 

 

 

1、現在の練習時間について

1-1 各団体が提示している練習時間について

 

 現状、小学生ソフトボールチームの練習時間は、チームによって差はありますが、平日2時間、土日祝は半日のチームが多く、日曜日・祝日は大会・練習試合という所がほとんどと思います。(土曜日に大会を行っている所もあります)

首都圏は、平日練習を行っているチームは数チーム程度。土日の半日、あるいは終日行っているチームをよく伺います。

 

 

では、練習時間について、どのように各団体が提示しているか、様々な観点から調査してみました。

 

 

<日本ソフトボール協会>

まず、私も日本ソフトボール協会のコーチ1を資格取得(2015年)しているので、日本ソフトボール協会の指導者講習会の中で伺った限りだと、「1日3時間程度に納めるのが理想」と、うろ覚えですが、学んだ記憶があります。

理由は、少年野球で肘を痛めた子のチームの特徴を探ったら、1日3時間以上の練習をした選手達が多いという点からという物でした。

ただ、日本ソフトボール協会が定めたルールなのかどうかは定かではなく、HPでも小学生の練習時間についての掲載は見つからず(見逃しているだけかもしれませんが)、資格取得した人、登録しているチームにきちんと伝わりきれているか、周知徹底という点では疑問です。(初めて聞いたという方もいると思います。)

 そのため、クラブチーム(スポーツ少年団以外で登録・活動しているチーム)の練習時間に制限は特になく、使用しているグラウンドの保有先(学校、施設等)の使用時間によって違う程度という状況です。

 

 

また、小学生ではありませんが、中学生のソフトボールの練習として、『中学校部活動におけるソフトボール指導の手引き』という資料を見つけました。

http://www.softball.or.jp/announcement/pdf/manual_junior.pdf

※作成年代不明

 

こちらでは、8ページに練習メニューについて細かく2時間の練習メニューが例としてありますが、これ、中学生でもかなり上級者向けの(監督の考えが浸透して、かつ経験者が入部していて、中学生チームの中でも毎年のように好成績を挙げている常勝チームが淡々とこなす)メニューになっていると感じました。

次の練習への移動・準備時間、ミーティング・休憩時間は入っていないし、初心者チームの場合は、各練習の説明時間等が必要になるので、記載の練習メニューはかなり削られると思いました。

ランナーを付けたバッティング練習も20分とありましたが、週3平日練習、土日は毎週試合とかいうチームでないと上手くこなせないと思います。(多分、カウントを作って(1ボール1ストライクから等)の練習とも思いますけどね。20分で終えられる程のコントロールの良い投手を育てているか、コーチ、バッティングマシンが無いと無理ですし。)

 

 

 

<学童野球>

学童野球では、1994年に日本臨床スポーツ医学会「青少年の野球障害に対する提言」として、小学生では、「週3日以内、1日2時間以内が望ましい」との報告が出ています。

(参考URLhttps://www.med.or.jp/dl-med/doctor/ssi/sports25/sports25_k8.pdf

 

また、公益財団法人全日本軟式野球連盟では、2019年「学童野球に関する投球数制限のガイドライン」の中で、

「1週間に6日以内、1日3時間を超えないこととする。」と発表しています。

(参考URLhttps://jsbb.or.jp/uploads/6b2771c3abc34142f10f2d769d38633c.pdf

 

実際、少年野球で肘を痛めた子がやたらと多いという話を伺います。

ただ、小学生男子ソフトボールの指導をしていて、肘が痛いと言って、病院まで行った子は、ほとんど伺った事が無いです。私自身もほとんどないですが、同じように投げ方・酷使はすべきではないと肝に銘じております。

 

また、余談ですが、ソフトボールの投手の投げ方でよくあるのが、「腕を腰に当てて投げるか投げないか」論争です。

ソフトボール経験者の指導者のほとんどは、腕を腰に当てて投げるのが常識という方がいらっしゃいます。(実際は擦る程度だから問題ないという方も勿論います。)

私個人は腕を腰に当てて投げさせない指導をしていますし、日本女子ソフトボールの宇津木妙子元監督は、2019年日本高野連による第1回「投手の障害予防に関する有識者会議」の中で、「上野投手は納得するまで投げます。1日、300から500球。以前は臀部(でんぶ)に腕を当てて変化球を投げていたため、ケガもありましたが、投球フォームを変え、当てなくなってからは故障もありません」と発言しています。(つまり、腕を腰に当てないで投げても問題ない)

 

個人的には、小学生の時は、体がまだ出来上がっていないので、骨が柔らかく、腰に腕を当てて投げると肘が曲がって成長してしまうのではないかと思っているので、ソフトボールだけを今後も継続していく事を考えている投手には当てさせる事も考えますが、実際は、当てて投げさせる指導をした事は一度も無いです。

名門中学野球の監督さん(先生。元県準優勝成績有)からは、小学生の時に、腰に腕を当てて投げていた投手が、野球部に入ってくると、その時点で腕が曲がっていて、コントロールが良くないから投手をさせづらいという話も言われた事があります。

実際に、別の小学生ソフトボールチームで、チームが強くなりすぎて、練習や大会出場が多くなったために、肘を疲労骨折した投手も数名知っていますし、私のチームでも別のコーチが手掛けていた投手が投げ過ぎにより、肩を壊してしまった事もあるため、それ以降は、投手についての投げ込み過ぎは繊細に注意しております。

(投手の球数についてはまた、別でお話させて頂きます。)

 

 

 

<海外の医学的な研究結果>

 

公益財団法人日本体育協会

「スポーツ医・科学の観点からのジュニア期におけるスポーツ活動時間について(文献研究)」 11ページ、研究3より

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/013_index/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2017/12/20/1399653_01.pdf

 

 日本人と外国人の骨格は違うから当てはまらないという見解もあると思いますが、(個人的には小学生の内は、あまり大差を感じていないので、当てはまると思っています。)簡単に言うと、このページでご理解頂きたいのは、1週間で年齢×1時間の以上の活動をするとケガをしやすいという事例が挙がっているという点です。(2015年)

よって、試合・練習時間を合わせて、小学1年生(6歳)であれば1週間6時間以内。6年生(12歳)であれば週12時間以内です。

 

個人的には、この時間を超える事が無いように注意する事は必要だと思っておりますし、これを守る事が1番良いのではないかとも思っております。

 

 

 

<スポーツ少年団>

そんな中で、問題を感じたのが、スポーツ少年団の活動時間についてです。

 

『スポーツ少年団とは ガイドブック』を読むと、(令和3年1月発行)

https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/syonendan/2021/R3suposho-toha.pdf

資料12ページ(本10ページ) 「単位団活動の目安としては、123 時間程度、1 週間に 23 回が無理のない活動といえるでしょう。」

 

という文言があります。ちなみに、これが令和3年時点の最新情報ですが、なぜか、地方のスポーツ少年団では活動時間が「2時間以内」とされている地区があります。

スポーツ少年団のガイドブックにて、練習時間が2時間以内にと最近、変更されているのならば、提言されていると思うのですが、そのような資料は見当たりませんでした。

 

 

鹿児島県体育協会 スポーツ少年団のあり方について

https://ksr2019.sa-suke.com/99_blank012.html

※ 週3回以内,1日2時間以内という原則線を厳守する

 

埼玉県スポーツ少年団 「スポーツ少年団活動の今後の在り方について」 より (令和元年7月)

https://www.saitama-sports.or.jp/wp/wp-content/uploads/katudou.pdf

※2時間程度 

 

山口県 スポーツ少年団指導者の手引き

https://yamaguchi-sports.jp/wp/wp-content/uploads/2022/05/73a5e66aa19b07de56fc79710ac92bbd.pdf

※ 週に2~3回、1回の活動時間は、2時間以内

 

香川県 単位スポーツ少年団活動の指導と運営の指針より(平成5年)

https://www.kagawa-sports.net/shidousya/

※同一団員の活動時間(練習時間)は、2時間を目安とする。

 

 

福井市スポーツ少年団 加盟スポーツ少年団の活動におけるガイドライン

https://fukuicity-sport.jp/wp-content/uploads/r3-gaidorain.pdf

 ※1週間に3回以内、2時間以内の活動

 

 

『スポーツ少年団とは ガイドブック』内では、2~3時間としていながら、なぜか、上記各団体は練習時間を2時間以内としています。

福井市の文章は古い資料なのか、期日記載がありませんでしたが、なぜか、

 

日本スポーツ少年団では、活動時間範囲の目安を、1週間に3回以内、2時間以内の活動としています。これは、特に発育発達期の子どもたちへの過度の身体的負担を避けるため、学業や家庭生活に支障をきたさないためであり、遵守すべきものです。なお、この活動時間には公式戦や練習試合も含まれます。

 

とまでありました。

『日本スポーツ少年団とガイドブック』の活動時間範囲の目安と異なった文章が記載されています。

ちなみに、私自身、スポーツ少年団の指導者資格も持っていたので、2004年時点での指導者ガイドブックを持っていたので開いてみると、練習時間に関しての制限の記載はありませんでした。

一体、いつ、「1週間に3回以内、2時間以内の活動」になったのでしょうか?

 

 

また、

 

延岡市スポーツ少年団憲章(平成22年)

http://nobeoka-sports.jp/05-download/file/5-8_syounen-yoshiki/5-8-2_kensyo.pdf

 

スポーツ少年団活動

 ① 団員の身体の発達状況や体力面を考慮し、適切なスポーツ活動は一日につき2~3時間、1週間に3日程度とする。

 

と延岡市では『スポーツ少年団とは ガイドブック』通り、正しく表記されていました。

 

 

さらに、

岐阜県スポーツ少年団 活動指針より(令和2年度改訂版)

https://www.gifu-sports.org/sports_shonen/file/sports_shonendan_kshishin.pdf?20200612

 

2)活動時間は、公式事業を除き下記のとおりとすること。

1)集合から解散までの時間は、4 時間程度とすること。 

 

 

とありました。 

その他県情報としては、福島県は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、練習時間を2時間と示している所もありました。愛知・静岡・北九州・長崎・愛媛については、特に練習時間制限に関して、ネット上で確認出来ませんでしたが、資料配布されている可能性もあると思っております。

 

ここまでを見ると、スポーツ少年団の練習時間の制限は統一されておらず、各都道府県のスポーツ少年団によって異なっている事が分かりました。

つまり、同じ団体で下部組織でありながら、「単位団活動の目安としては、123 時間程度、1 週間に 23 回が無理のない活動といえるでしょう。」という文章で対応している所と違う解釈で行っている所があるという事が分かりました。

 

 

 

 

 

1-2 都道府県単位のスポーツ少年団の「練習時間は2時間以内」と提示しながら、主催大会の1日の試合時間が2時間をオーバーするのは問題ないのか?

 

そして、個人的に非常に強く疑問に思っているのが、練習時間・活動時間を「2時間以内」としている地域の県主催の大会は、1日2時間以上の試合を開催しているという点です。

 

 

鹿児島県大会1試合70分(勝ち上がると最大3試合。=210分(約3時間30分+タイブレークがあればさらに追加)

https://ksr2019.sa-suke.com/iltupann21.pdf

第42回 山口県小学生ソフトボール選手権大会 1試合60分?70分?(勝ち上がると最大4試合)=240280分。約4時間~4時間40分

https://cdn.goope.jp/5723/200725214653-5f1c29bd4b1e5.pdf

第33回 全日本小学生(男・女)埼玉県予選会 1試合約1時間強(勝ち上がると最大2試合も合計約2時間30分超え)

http://www.saitama-soft.com/2019-33zennichisyougakukenyo4.pdf

 

 

練習時間を2時間以内と制限しておきながら、負けたチームはよくても、勝ち上がるチームは、1日の合計試合時間が2時間を超えてしまっている事は問題ではないのでしょうか。

上記の都道府県スポ―ツ少年団は、日本スポーツ少年団が提示している活動の目安と違っているし、そういう矛盾を起こしているから、練習時間を2時間以内で守るようなチームは少ないんだと思ってしまいました。

福井市なんかは、「この活動時間には公式戦や練習試合も含まれます。」まで文章を入れておりましたが、この文章が現在も規程として成り立っているのならば、全国大会や北信越大会に出て勝ち進んだ場合、「2時間以上の活動を超えたら棄権しなさい」という意味なのでしょうか?

 

 

 

個人的には協会主催の大会で、1日の試合時間を2時間以上行うならば、練習時間もその時間までならOKとするべきではないでしょうか。(ちなみに、練習時間を2時間と設定するなら、1日の試合時間も2時間にするという意見には反対です。

私個人は、1日4時間程度の練習時間、試合時間を基準とすべきと思っておりますが、各都道府県のスポ―ツ少年団は、ちゃんと日本スポ―ツ少年団のガイドブックに合わせて、「単位団活動の目安としては、1 日 2 〜 3 時間程度、1 週間に 23 回が無理のない範囲の活動」と謳い直すべきだと思います。

 

 

 

 

 

1-3 野球やソフトボールは他のスポーツと同じ練習時間に統一されるのはナンセンスだ

野球・ソフトボールの競技特性として見ると、団体球技スポーツですので、個人技能を高める練習とチーム内連携を確認し合う練習が必要で、個人でもチームでも行う練習が必要になるので、個人競技よりも練習時間はかかって当然です。

また、団体球技スポーツの中でも、野球やソフトボールは、攻撃、守備、投手、走塁と、別の動きが必要で、ある意味4つの競技が混ざり合ったスポーツと見られてもいいのではないでしょうか。

 

「練習時間は2時間以内」といいますが、専用グラウンドを持っているチームならまだしも、野球やソフトボールは他のスポーツに比べて、準備に時間がかかります。用具も多いし、グラウンドも広いです。そして、アップやクールダウン、休憩、ミーティング、片付けは含めないと指摘している所もありましたが、それもちゃんと考慮した2時間以内なのでしょうか。子どもが行うスポーツだからと、他のスポーツと一括りに考えられるのは、非常にナンセンスだと思います。

 

 

<参考例:各スポーツの競技を行う場(グラウンド)の面積比較(小学生用)>

ソフトボールグラウンド(レフト・ライト線を53.34mとした場合、扇形の面積:半径×半径×3.14) 8934

サッカーグラウンド 50×80 4000

ミニバスケットボール 28×15 420

バレーボール 36.6×18.37 672

バドミントン 13.4×6.1 82

剣道 11×11 121

空手 12×12 144

 

 

 

 各競技の試合時間についても調べました。

 

 

 

グラウンドの広さは、小学生のサッカーのグラウンドと比べても倍以上ありますし、野球、ソフトボールの試合時間が断然長いです。

他のスポーツのほとんどは、攻撃と守備が一連の流れで行われますが、野球・ソフトボールは、攻守交代という他のスポーツでは見られない準備時間があります。攻守交代の時間は大体2分程度ですが、1試合90分7イニングまでやるならば、全部で13回は繰り返されます。つまり、攻守交代だけで26分間使う事になります。3分の1が攻守交代の時間で、実際の試合時間は約60分間です。※1試合50分5イニングであったとしても9回の攻守交代が必要で、18分間が使われている事になります。実際の試合時間は30分程度しか試合してない事になります。

たった数秒、数分の移動時間と思われがちですが、それが何度も繰り返されるのだから、それだけ時間もかかるというは認識してもらえないのでしょうか。

 

「試合時間より練習時間は長くするべきではない」という意見も聞いた事がありますが、それだったら、陸上・水泳・武道のスポーツは、10分経たずして、練習を終了する事になりますが、それで問題ないですか?

1試合数分の競技が2時間も練習出来るのならば、その比率分の練習時間は野球やソフトボールにあって当然ではないでしょうか。(1試合の試合時間が30分のスポーツの練習時間が2時間になるならば、1試合90分かかる野球・ソフトボールは、練習時間6時間で同じ比率です。)

 

かといって、野球・ソフトボールは、1日中練習するべきと言いたい訳ではないですが、競技を行うグラウンドも1番広く、試合時間も1番長い競技であるため、他のスポーツと同じ「2時間以内」で括る必要性って、どこにあるのでしょうか。各スポーツに見合った練習時間があるべきだと強く主張させて頂きます。

 

 

 

 

 

1-4 丁寧な指導と練習時間短縮を同時に求めるのは矛盾している

私自身もスポーツ少年団でお世話になり、指導者資格も取得し、日本スポーツ少年団の考え方には賛成する部分が凄く多いのですが、なぜ、都道府県単位のスポーツ少年団が「1日2時間以内」という数値にこだわっているのかは分かりません。ぜひ、ご存じの方からご教示頂きたいです。

 

個人的に考えた結果ですが、上記学童野球が示していると言われている1994年の日本臨床スポーツ医学会「青少年の野球障害に対する提言」にある、「小学生では、週3日以内、1日2時間以内が望ましい」との報告を未だに採用している、他のスポーツでも採用したからなのかなと感じております。

ただ、日本スポーツ少年団が「単位団活動の目安としては、123 時間程度、1 週間に 23 回が無理のない活動といえるでしょう。 」と提示しているのにも関わらず、組織として統一されていないのは、組織として疑問を感じざるをえません。

 

 上記の都道府県単位のスポーツ少年団では、勝利至上主義や身体的・精神的暴力行為等の問題が背景にあった事からガイドラインを作成した点は素晴らしいと思います。

暴力行為を行わない=丁寧な指導が必要の図式も理解します。

ただ、例えば、昔であれば、人数も多かったので、エラーした子は外せば良かったですが(勿論、あとでちゃんとフォローはしていましたよ。)、今は少子化という点、1人1人をしっかりと指導していこうという流れもあるし、科学的な指導も出来るようになったので、以前よりも指導時間がかかっている自覚があります。

 

 社会的に、現代指導者は丁寧な指導を求められています。これはどのスポーツも同じです。そして、小学生の指導は主体的に動かそうと思ってもいきなり出来る訳じゃない。まだ段階的に低いので、1つ1つこちらがリードしながら指導し、出来るようになってやっと任せるようになると上級指導者資格講習の中でも勉強させて頂きました。

 

効率的な練習メニューの作成の必要性も、指導時の言葉も短くする事に気を使います。そうあるべきです。

ただ、現場の声として、大きく言いたいのは、ソフトボールや野球は、団体球技スポーツの中でも人数が多いスポーツだからこそ、1人1人に対して、チームに対して丁寧な指導を行うならば、それだけ時間が必要である事の理解を求めたいです。

 

現代社会では働き方改革が叫ばれて久しいですが、「働き方改革=時間短縮」のイメージの方が多いはず。そのイメージのまま「スポーツ界も練習時間の短縮を!」と求める方は、本当の働き方改革を理解していないです。実際の働き方改革は、業務の効率化だけでなく、きちんと「生産性の向上」という言葉が使われています。

「スポーツ界にも働き方改革を!」と言うならば、単純に練習時間を短くする事だけを望むのではなく、技術の向上が見込める効率的な練習と生産性の向上を提示すべきではないでしょうか。

 

勿論、長時間の練習(1日練習)は、身体が未発達な小学生に対して、良いとは思いません。ただ、練習時間の短縮を求めながら、丁寧な指導も求めるならば、効率的かつ効果的な練習が実情的には必須になります。

 

究極的に言えば、練習の時間は5秒で終われます。投げる動作や打つ動作の練習1回だけなら5秒で終えられます。でも、試合で発揮出来るパフォーマンスは、1日5秒の練習で出来るのかと問われたら、無理だと思います。

効率的かつ効果的な練習といっても、時間はかかるし、(各スポーツによってその時間は変わるはずです)、生産性の向上(勝利や選手の成長)を求めるならば、さらに時間が必要になります。だけど、やり過ぎたら体を壊してしまい、元も子もなくなってしまう。

 

 

 与えられた時間の中でやるしかないのが実情ですが、時間が短過ぎたり、試合数が少ないと継続率が下がるというデータがあります。そして、「じゃあ、小学生男子ソフトボールにとって、何時間が適正なのか?」というお話が次になります。

 

 

 

 

 

2-1 程よい練習時間は、全国大会の1日の最大試合時間と同じ約4時間程度が良いのでは?

 

上記をまとめた上での個人的見解の結論から述べますが、

 

練習時間は、日本ソフトボール協会主催の小学生男子ソフトボール大会の全国大会の日程と時間に合わせる。

1日の最大試合時間は約4時間なので、試合数で合わせるのではなく、4時間以内であれば何試合でもこなしてOKとするのが1番良いのではないかと思っています。

 

個人的には、日本ソフトボール協会主催の全国大会の日程、試合時間は、よく考えられて出来ているなと感心しています。

日本ソフトボール協会主催の全国大会の日程は、春3日間、夏4日間の連戦で行われています。

 

1日目:(1回戦)1試合90分、(2回戦)1試合90

2日目:(3回戦)1試合90分、(準々決勝)1試合90

3日目:(準決勝)1試合90分、(決勝)1試合90

 

1日目:(1回戦)1試合90

2日目:(2回戦)1試合90

3日目:(3回戦)1試合90分、(準々決勝)1試合90

4日目:(準決勝)1試合90分、(決勝)1試合90

 

 

という日程です。

 

夏は4日間の日程で行われ、1回戦から登場して、仮に全試合タイブレークで決勝まで勝ち上がった場合。

(タイブレークは、最大2回まで行うので、1回表裏を10分として計算する)

 

1試合110分×6試合 (660分)

 

つまり、1日3時間40分。4日間では11時間分の動ける体力時間が必要です。

全国大会に出場する選手の多くは、小学生6年生。

年齢は1112歳ですので、前ページでも記載した、「1週間あたりのスポーツ活動時間が年齢×1時間より多い場合には、スポーツ外傷・障害、特に重いスポーツ障害が発生する可能性が高かった」という事例時間を超える事は無く、活動時間という点で考えても問題ない範囲と言えると思います。 

 

また、冒頭で、小学生男子ソフトボールチームの練習時間の多くは、「平日は週2回2時間ずつ、土日は半日というチームが多い」と記載しましたが、実は、この時間って、夏の日程とほぼ同じに出来ているのに気づいていますでしょうか。

 

 

そして、前ページからの続きですが、野球やソフトボールは、他のスポーツより、グラウンドを広く使うので、準備・片付けに時間が掛かります。他のスポーツ含めて、一律に「1日の練習時間2時間」と指導する事に大変違和感を覚えています。

また、前のブログである「「楽しい」には違いがある」でも書いたように、練習時間の短さや試合数が少なくて、技術力が伴わずに卒業した子は、継続しない事が多いです。

だからといって、長時間練習や試合のし過ぎで、ケガをしてしまうのも違うと思っています。

 

アップ・クールダウンをしっかりと行い、酷使させるような練習は控え、休憩時間も与えながら、栄養・睡眠の大切さも指導者が伝えていく。身体に違和感等があれば指導者に伝えやすく、休ませる事が出来る環境を作る事等が大前提で、1日の練習・試合時間は、最大4時間以内に収める。そして、1週間の練習・試合時間は、最大合計12時間を超えないように考慮するのがベストではないかと考えます。

 

 

 

具体的に言えば、土日しか練習時間を割けないのであれば、午前か午後かのどちらかにする。

グラウンドの確保時間は4時間にして、準備・片付け、アップ・クールダウン、休憩・ミーティング等を合わせれば、約1時間使います。練習時間はおのずと3時間程度になります。(グラウンドが広いチームは、準備・片付けで30分近くかかる所もあると思います。)

  

各チームによって、グラウンドの確保状況は違います。首都圏であれば、土日しか練習出来ないチームは多いです。

グラウンド事情により、2時間しか出来ないチームならば、それはそれで致し方無いと思います。

 

土日1日グラウンドを確保しているチームならば、1日中グラウンドを開放しつづけ、参加する子ども達が4時間までの練習時間とした形(練習時間のフレックスタイム制)になって出来るならばそれもそれでありだと思います。

(塾や別の習い事があるため、午前・午後のどちらかしか来れないという子達のための対応。)

 

また、下級生についてですが、小学1年生は、6、7歳なので、1週間で6、7時間の練習時間を超えないように、

 

平日はお休みで、土日だけ練習をさせる等の配慮も必要になると思います。(すでにやっている所もあると思います)

 

 

 

 

 

2-2 程よい1日の大会試合数は、数ではなく、1日4時間程度(週12時間未満)で考えてみては?

 

 

 1日の大会試合数についてですが、関東では、「全国大会は1日最大2試合までしかやらないのだから、2試合以上するべきではない」という意見をよく伺います。そう言う地区は、だいたい1試合の試合時間は5070分で終えている大会が多いです。

50分×2試合なら、1時間40分。70分×2試合なら2時間20分。

全国大会を勝ち切ろうと思ったら、1日2試合タイブレーク付で戦うだけの3時間40分頑張る体力が必要なので、上記の時間では体力が身に付かないと思います。

 

 

広島、兵庫、福岡、宮崎、長崎等、全国大会でよく勝つ地区の全国大会予選は、1試合8090分、1日最大2試合で大会をしています。

神奈川や鹿児島の場合は、1試合70分ですが、1日最大3試合行う事があるので、最低でも1日3時間30分は頑張る体力は鍛えています。

学童野球や硬式の小学生は、練習試合でも90分で試合を行っております。

ちなみに、「年間100試合は多い!」と言われますが、学童野球の年間100試合は、9000分。

小学生男子ソフトボールは、50分試合を多くする地域なら、年間100試合でも、5000分。

学童野球のチームのほぼ半分試合をしてないくらい少ないです。学童野球の子達よりもケガが少ないのは試合時間の少なさも一理あると思います。

 

「1日2試合しかしてはいけない」のなら、1試合の試合時間は90分(1日2試合)で行うべきではないかと強く主張します。80分でも良いと思います。

普段、1試合50~60分で試合をする都道府県のチームは、全国大会を見に行っても、終盤や最終回で体力が無くなってるシーンをよく見かけます。小学生だから終盤疲れるのは当たり前なのではなく、そもそも1試合90分で試合が出来る体力を組織的に育成していない事が原因だと思います。

 

試合数にこだわるのではなく、4時間程度にこだわって試合数を変動出来るようにすればよい。

例えば、上部大会に繋がらない県主催の大会や市大会、地区大会(いわゆる公式戦)もタイブレークを含むなら1日2試合90分でやったらいいと思います。90分でやる事が出来れば、日程が増える。日程が増えるという事は、冠大会の大会数を減らす事に繋げる事が出来ると思います。これは、大会数が多いと嘆く都道府県はメリットでしかないと思います。(公式大会時は別大会開催禁止にしたり、予備日もしっかりと設けておく。そうすれば、なお大会数を減らせると思います。)

 

逆に、協賛会社主催の大会や冠大会は、50~60分と短い試合時間で、様々なチームと多く対戦出来る事(交流)を目的として1日の試合数を3~5試合にして、1チームの1日の最大試合時間が合計4時間以内に収まるように開催すればいい。

やみくもに試合数にこだわるのではなく、大会の目的、趣旨に応じて、臨機応変に試合数を対応する事が、価値のある運営になるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 繰り返しになりますが、アップ・クールダウンをしっかりと行い、酷使させるような練習は控え、休憩時間も与えながら、栄養・睡眠の大切さも指導者が伝えていく。身体に違和感等があれば指導者に伝えやすく、休ませる事が出来る環境を作る事等が大前提で、1日の練習・試合時間は、最大4時間以内に収める。そして、1週間の練習・試合時間は、各学年の年齢×時間で終えるように努め、最大合計で12時間を超えないように考慮する。

 

 

 

 これが、小学生男子ソフトボールにとって、長時間過ぎず、短時間過ぎず、無理のない範囲であり、満足+またやりたいと思えるぐらいの活動時間であり、技術の向上と余裕を持った指導が出来る時間であり、この時間内で上手くさせるだけの技術指導を考える事くらいは譲歩すべきだと思いますし、ケガをしづらい環境作り、他の活動時間を与える事にも繋がる最適な時間なのではないかと感じております。

 

 

今回の話は、あくまで理想論の話です。

勿論、各チーム、グラウンドの確保事情が違うし、運営方針も違うので、一律して4時間にするべきという話ではなく、「練習は1日2時間以内」だとか、「1日2試合まで」という裏付けされた理由もないルールを守らせようとする団体に対して、強く反論するために書いた回ですので、あしからずです。